東京都内でもトップクラスの人気店にして、食通をして「鐘ヶ淵の奇跡」と言わしめた焼鳥/鳥料理店「酒亭 田中」(旧店名「鳥田中」)。
…なんと同店から初めての暖簾分け店「酒亭 湯澤」が昨11月にOPENしたとの情報。

東日本橋~馬喰横山界隈の周辺環境にもマッチしたシックで落ち着いた店内。
既に予約が少し取りにくくなっている状態でした。
「酒亭 湯澤」で注文したもの
■ 酒亭コース …¥6,800
(椀物、揚げ物、自家製豆腐、串5本、一品料理、お刺身、一品料理、口直し)
(コース外で追加注文)
■ ふりそで …¥500
■ 皮 …¥450
■ 鶏そば(醤油)…¥880
■ アサヒ生ビール マルエフ …¥700
■ 紀土 純米吟醸(片口) …¥1,200
椀物

白湯(パイタン)仕立ての椀物

つくね(蓮根入り)、蕪、人参、柚子皮。
白味噌がベースなのですが、愛媛の宇和島の味噌汁のように甘い口当たり。
蕪がトロトロに溶けるような食感。
…ところで話がそれるが、この店の師匠の「酒亭 田中」の田中惣一郎さんは日本料理の名店「京味」ご出身。それゆえ「酒亭 田中」が提供する料理は焼鳥のみならず一品料理がとても精緻で完成度が高い。
この椀物をみるに、どうやら「酒亭 湯澤」の一品料理にも酒亭田中イズムはしっかり受け継がれているようだ。
一品料理①

仙台せり、しらす、沢庵のおひたし。尖りのない柔和で優しいニュアンスの魚出汁が美味。
ねぎま

熊野地鶏の「ねぎま」。

表層はパリッと、内側にかけて脂滴るジューシーさを残した焼き加減が絶妙なり。
揚げ物

海老芋、うど、タラの芽の天麩羅。油は米油かな?薄くサックリと軽い食感の衣。
何気に驚いたのが海老芋で、里芋の小芋のようなネットリとした食感。
レバー

京赤地鶏。ぷりっとした反発係数高め。見た目からも鮮度の良さが伝わってくる。

犬歯で噛むとプチッと弾け、ねっとりと舌に絡んでくる。
濃厚なフレーバー感があり最高。ひかえめな甘さのタレもレバーを引き立てていた。
自家製豆腐

坦々風の肉味噌にミョウガなど薬味多め。
豆腐の生地は荒々しく大豆の濃厚な味わいのするタイプでした。
大間のまぐろ

なんと大間のまぐろが登場!…しかも「やま幸」!
こういう大胆なサプライズを入れてくる度胸は新店とは思えない。

食べ方も面白くて、三切れのうち二切れはふつうに刺身として食べ、
一切れはシャリと海苔で巻いて「巻き寿司」風に。

山葵を弾いてしまうような脂の強さ、しっとりと柔らかな肉質。最上級のまぐろでした。
手羽先

ふたたび熊野地鶏。

かみ締める都度、ジワジワッと甘い脂が湧き出てくる間隔。力強い食感も楽しい。
手羽の骨は綺麗に外されており丁寧な手仕事も垣間見えた。
一品料理②

しじみほうれん草、あわびたけ、信州なめこのおひたし。
あわびたけが肉厚で食べ応え抜群。
スナップえんどう

表面にかるく焦げ目がついており香り高いが、
野菜としての瑞々しさと青臭さ、甘味も残った芸術点が高い焼きの技術。
レバーパテ

固めのバケットにマッタリとした粘度の高いレバーパテ。
アクセントのピンクペッパーがピリリと効いてて美味である。
口直し

香の物3種(大根と長芋醤油漬け、蕪の浅漬け)
大根おろしではなく口直しとして漬物が出てくるあたり、純然たる焼鳥店というより
「懐石料理のコースの中に焼鳥が入っている」と表現するのがそぐわしい気がする。
つくねときんかん

つくねは表面をパリッと仕立て、内側に肉汁を閉じ込める構成。挽きが粗くゴロゴロとした強い食感が印象的だ。
「きんかん」を潰しチーズを纏わせれば美味さにブーストがかかる。
ふりそで

近年?希少部位として見かける「ふりそで」。
やはりよく可動する部位なので旨味が強く濃厚な味わい。粗塩とも相性がよい。
皮

皮って焼鳥店ごとに焼き方の思想が違うので面白い。
著者は焼鳥屋を定点観測する方法として皮を注文する事が多い。

比較的つよめの火入れで水分を飛ばしておりバリッとした軽妙な食感。
どこか「博多鶏かわ焼鳥」にも似た感じがする。メイラード反応した皮からは芳醇な香りがする。
鶏そば(醤油)

「鶏そば」は醤油と白湯(パイタン)があり迷ったが前者をチョイス。

焼鳥/鳥料理店が片手間で作ったとは思えぬ整った丼顔である。

ファーストタッチは鶏油(チーユ)の重厚感あるコクとヌメり。
次第にふくよかな鶏の風味がしり上がりに口中に広がっていく。
カエシの醤油はまろやかで鶏の風味のノイズにならない。

麺は製造元不明だが少し縮れた楕円形の中細麺。芯の固さをほんのり残したアルデンテ寄りな食感だ。

プリプリとしたもも肉も入っており大満足だ。
あとがき
以上、「酒亭 湯澤」でした!さすがは「酒亭 田中」のお弟子さん。
鳥以外の料理のクオリティも大変高くこの立地と内容でコース6800円ははっきり言ってリーズナブルだ。
早晩、さらなる予約困難店になるのは間違いなし。
おそらく2025年の東京のグルメシーンを彩る大型ルーキーになるのは必至だろう。
焼鳥ラバーの諸兄は早めに訪問するのをオススメする。